2021/6/6

価値観と価値

価値観はある対象についての価値の基準値のこと。
価値はある対象についての現在の保持している価値のこと。

価値観は知能としては最初から持っているものではなく、
成長につれて学習していって習得する価値に対する基準値の事。
成長の過程で外部から得る場合と、
自分自身がもっている他の価値観を参考にして設定する場合がある。
ほとんどは外部から得られる情報として価値の基準値を得ることになる。

価値は現在のある対象についての価値の設定値の事。
他の刺激や経験、時間の経過によって価値の設定値は変化する事がある。

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子供の頃にお金の紙幣を最初に見たとしてもその価値については
自分の記憶からしても絵の描いてある紙くらいにしか考えないだろう。
それは、紙幣としてお金としての価値を知らないわけであり、
その時点での価値観は本来のお金や紙幣としての価値観を持っていないのである。
これをどの時点でお金や紙幣としての価値を知るようになるかというと、
親の買い物などについていった際に、物と交換でお金を支払う様子などを
繰り返し見ることでそのお金、紙幣などにものと交換する価値があるという事を知る。

お金を渡されてお使いをするとか、お菓子を買うとか、
そのような経験を初めてすることになった時、お金や紙幣への価値は
まだ経験的に記憶していたとしても、実際にその価値の設定はされていないはずである。
しかし、この何か物を購入するという際に、お金、紙幣を渡し、
物を手に入れるという経験をした場合に、
このお金、紙幣には対象となる物の価値がある事を知ることになる。

お金に最初の価値観としては、物と交換するだけの価値として最初は経験し記憶することになるだろう。
その後、お金としての一般的な価値観や、プラスの価値だけでなく、
お金がもとで人間関係を悪くするとか、
ギャンブルなどで身を持ち崩す等のマイナスの価値も知るようになる。
これらの対象の価値に対する経験の積算が価値観としての基礎となっていく。

価値観というものはその知能が持つ対象の価値に対する経験から成り立つ。
最初から持っている価値観というものはない。

価値観の設定としては、外部の対象だけではない。
体の内側から発せられる刺激としての対象についても価値や価値観が設定される。
基本的な欲求や、五感に関する刺激として痛み、不快な感覚、熱、光、味、音、匂いなど、
刺激として認識される全ての対象について価値と価値観は設定される。

人間の成長においてはまず自分自身の体内から受ける刺激と、
周辺にある環境から受ける刺激が主な刺激となるだろう。

生物としての体内から発生する刺激と、
五感に関係する周囲の環境と、周囲にいる人間、恐らく家族などからの刺激が
最初の価値の元となる刺激となるだろう。

刺激を認識して記憶するシステムについては以前書いた事があるので
ここでは省くが、記憶するシステムの中でも価値の設定は刺激の認識のシステムでも
根本的な重要な要素である。

刺激のプラスかマイナスかの価値の判断基準となる要素であるので、
その後の生命の持続のために重要となってくる要素だからである。
その刺激が自分にとってプラスであるかマイナスであるか、
まずはその判断だけが最初に行われ、認識され、記憶されることになるが、
刺激の認識と記憶の際に同時に関連される他の刺激の要素も、
そのメインとなる刺激の関連された刺激となり、その後も継続して関連の刺激として
想起や認識に持ち出されることになる。

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想起された時の価値

想起された時の価値は、その想起された時点での想起される対象についての
価値観によって価値が決定される。

記憶された時に設定された価値は、あくまでその時点での価値観にとっての
対象の価値であり、価値自体を記憶することはない。
つまり、価値は都度、その時点での価値観によって決定される。
つまり、価値は記憶されないが、価値観が記憶されるという事になる。

例えば、学生の時の思い出の品があったとする。
仲が良かった人間との思い出の品や、記念に手に入れた品であるとか、
その時点では思い出としての価値を持ち、そのような価値観をもってして
価値が設定され思い出の品としての価値と保管がされることになる。
さて、その後20年が経過したとして、その時にその品についての価値は
どうなっているかというと、手にした時に持っていた価値観としての価値は
恐らく変化して減少しているはずである。
しかし、思い出としての価値観の価値は増加しているはずである。
これは、価値が変化したというよりも、その価値を認識するときの
価値観が変化した結果の事であり、その間に価値も価値観も維持されておらず、
変化したということになる。

人工知能においても、価値はその時点での価値観によって価値が認識できればよく、
価値自体を維持、保存しておく必要はない。
価値観も時間経過によって変化するものであるべきであるし、
むしろ、価値観を変化させることによってその時の状況や環境に対応できることになる。

古い理論が新しい発見によって覆されるという事もあるし、
そのような価値や価値観の変化によって文明は発達していったと考えられる。

何か新しい事を発見しようとする、つまり、知能が新しい好奇心によって
新たな価値を探し出したり、新たな何かを作り出そうとするには、
価値観を変化させることによって、新たな何かに対する価値を高いものであると
認識し、価値観を変化させていくことが必要となる。

思考や想像という点において、強い人工知能が独自に新しい事について
自ら考える事ができるようになるということは、
つまりは、その新しい事を考える事、そのものを価値ある対象として、
新たな価値観にすることが出来る能力を持つ事であると考えられる。

人間の知能は価値のない対象については冷たいほどに無関心であるが、
価値のある対象については心血を注いでやり抜く力を発揮できる。

例えば、
私自身は、考えることに価値があるという価値観を持っている。
だから考えているように認識している。
人工知能についても、シンギュラリティのきっかけを自ら見つけたい、
それに価値があるという価値観をもっている。
だから、人工知能について考え、今こうして記録に残している。
ジャンルは違うが、ファッションには興味や価値はあまりないという価値観を持っている。
だから最低限自分が恥ずかしくない程度の体裁が整えば良いという認識をしている。

これらは、別の知能の別の価値観にはまったく一致しないはずであるが、
その価値観が持つ高い価値の対象については、想起される機会も多く、
知能が活動する時間の多くが想像や思考の対象となっているはずである。

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教育にも関係する事となるが、
この価値観の形成においては、価値観をより強く印象付けるために、
はっきりとした価値観を持たせる事が重要となると考えらえる。

価値観がはっきりしていると、その価値が設定される瞬間において、
その対象となる刺激についてはっきりとした記憶にも関係することになる。
また、行動のきっかけについても、価値観がはっきりしていた方が、
価値もはっきりすることになり、行動するにしろ、行動しないにしろ、
興味の有無にしても自分自身でその対象の認識が正確に行えることになる。

必ずしも特定の対象に極端な価値を設定するべきであるという事ではないが、
少なくとも自分自分がその対象についてできるだけ正確な認識ができるよう
価値観の設定をできるだけはっきりさせるよう努めるべきであろうと考える。

別にプラスマイナスゼロの価値観であっても良いのである。
逆に言えば、2つの面から同時に見ることが出来るということであるし、
ただ、プラスにもマイナスにも価値の設定が弱いということは、
その対象について知ることが少なく、関連して記憶する刺激も弱く、
そもそも認識自体が弱いということになる。
それでは想起の際にも弱いまま、記憶としても弱いままという対象になり、
実際に知能としてその対象を思考や想像に使えないということになる。

子供に対しては、その対象についてどう思うか、どう考えるか、
どうしたらよいかという事を、別にその時点で詳しくわからなくても
間違っていても良いからその時点での自分の価値観と意見を述べられるような
きっかけを与えることが重要となると考えられる。

~についてどう思う?
その位で十分である。
知能や価値の認識、価値観の形成においてはその積み重ね、回数が重要となる。

そうすれば、その内、自らの価値観の中で、自ら価値を認識し、
自ら考えられるようになっていくはずである。

そのような知能は、その後も思考力を成長させ続けることが出来るようになる。
これは知能の特異点であるともいえる。

人間の知能はここまで到達しない場合もある。
残念ながらそれは正しい。
私の周囲にもそのような人間が居るためである。

私が思考する事だけに価値を見出したとして、
常に思考を続けるように、
何か特定のジャンルに対して価値を見出して
高い価値観を持つ対象を持ち、それについて思考し続けるという事もある。
がしかし、
そのような価値観の中に高い価値を持つ対象を持たない場合があり、
この場合、あらゆることに場当たり的な思考しか行わない知能も存在しうるということである。

価値観には個人差があるというのは大前提ではあるが、
教育の観点からできるだけ、何でも良いから強い興味を持ち、
それについて多くを考えることが出来るような知能を育てるのが良いだろうと考える。

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